G Project
シェアオフィスと聞くと、起業したての若い人たちや、元気で勢いがある人たちが集まっているイメージを持っている人が多いのではないだろうか?
実際、G Innovation Hub Yokohama(以下G)の内覧者からも「入居者は若い人が多いですか?」と質問を受けることがある。その答えを、「30~60代と幅が広いです。40~50代で今までの経験を活かし、セカンドキャリアとして起業する人も結構入居されています」と説明すると、驚くと同時にほっとするようだ。実際に日本政策金融公庫の『2019年度新規開業実態調査』によると、起業家の平均年齢は、43.5歳となっている。
この数字、Gの入居者の平均と近いと思われる。これまでGはターゲットの絞り込みや、マーケティングをあえて実施しなかった。
というのは、G自身が何か特定の色がついた場になるというより、関内という街の価値を高める“HUB”になりたいと考えたからだ。Gのコミュニティは運営者だけが決めるのではなく、入居者や街の人と作り上げていきたいと考えている。
そのため所謂一般的に言うところのコミュニティマネージャーも存在せず、まるで街にいるかのような、多世代が集うリアルなコミュニティが生まれている。初めてGを訪れたとしても、“お客さん”という感じがせず、自然と受け入れられている気がするのも不思議でない。
人と人の中で生まれる偶発的なコミュニケーション
COVID-19によりオンラインが主流になりつつある今、こうした「リアルな場」は、予定されていない恣意的に作りこまれていない空間に面白さを感じる人が多いのではないだろうか。
Gは一章でも述べたように、個性が尊重されるコミュニティであり、「個」を十分に発揮し、仕事ができる。入居者も個人事業主や起業家だけでなく、建築家を目指す駆け出しの20代から、地方に本社がある会社の首都圏担当のマネージャー、企業に所属し週二日Gを拠点に仕事する会社員、大手企業から世界の環境破壊を食い止めるべくユニコーン企業に転職し全国展開を前に横浜での普及を目指す人もいる。
一方、定年を前に、これまでのキャリアや人脈を活かし独立した人、独立に向けGで週末に準備をしている人、キャリアアップのため資格などの勉強する人も。
「新しいプロジェクトを始めます」をその熱い思いをGのコミュニティページに投稿した20代の若者に、「こうした部分で応援できます」と入居者から自然と手が上がるのも、誰かにおもねることのない入居者の自主的なコミュニティならではないだろうか。
また、子育て世代も多く、子どもを保育園に送ってから出勤する人、子どもの下校時間に合わせて帰る人、Gにいるとその人に暮らしも見えてくる。暮らしと仕事がつながる人が多いからだろう。そして、女性も男性も育児にフルコミットしている人が多い。仕事に100%なのではなく、生き方に100%を注いでいるイメージだろうか?
価値観の違う多世代が交流するコミュニティ
一般的な組織でも、世間でも、多世代の交流は何かと難しい。とくにメンタル部分では「あの世代には理解できないだろう」という感情が、各世代で発生しがちだ。
なぜGでは多世代が同じコミュニティ内で共存できるのか?それには、大きく3つの要素があるように思う。
- 入居者ひとりひとりが、仕事を楽しんでいること
- シームレスな空間により、信頼関係が生まれていること
- 雑談によって、人生の先輩から、働き方やプライベートの話など総合的に話せる/相談できる存在がいること
Gにはチャレンジマインドにあふれる人が集い、世代は違えども志をもって仕事を心底楽しんでいる人がそろっているからだろう。また、通路から仕事をしている様子がわかるセミオープンのブースや、高さ180センチという少し低い壁、打ち合わせができるリビングなど、それぞれの働き方が見えてくることで、信頼感が生まれているのかもしれない。
キッチンでコーヒーを淹れる時間にうまれる雑談も貴重だ。「今は目の前の子育てに大変だが、間近で少し先の年代の人の働き方をみていると、“こういう60代を迎えるには今何をすべきか”というビジョンが描ける」、そんな話を聞いたこともある。
独身者が子育て中の奮闘記や、結婚の魅力について聞いている様子をみると、Gでの時間が生活や生き方につながっているのだなと実感する。そして、どんな話題でもざっくばらんに話せてしまうのが、Gの魅力ではないかと感じる。
目的が同じ、年代が同じ、そんな仲間と語り合うのも楽しいが、Gのようにいろいろな意味での多様な人たちが集う場であれば、年代が混ざりあり、異なる価値観に触れ合うのが己の成長につながるのではないだろうか?
インタージェネレーションは、自身の世界が広がる。
Edited by G Innovation Hub Yokohamaスタッフ 小室真知子
神奈川県出身、神奈川県育ち。強い地域愛がある中で、神奈川県内のローカルメディア記者を20年務め活躍。2019年8月よりGの運営に参画。子育てをする2児の母でありながら、時代の変化と共に自らの働き方も変革し、神奈川・横浜での地域を盛り上げている。