関内駅直結シェアオフィス | G Innovation Hub YOKOHAMA
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“G”の文化

G Project

<対談3>関内の未来おける「G」の役割

2019.07.19

G Innovation Hub Yokohama(以下、「G」)は、建築プロセスそのものが、関内のまちにイノベーションを生み出し、新しい働き方と暮らし方を提案していきます。すでに「境界」を超えているプロジェクトメンバーが見ている「これからの関内の未来像」とは?

 

対談参加者(敬称略)

総合プロデュース:相澤毅(株式会社plan-A)

建築設計:西田司(株式会社オンデザインパートナーズ)

建築設計:原﨑寛明(Hi architecture)

施工:福井信行(株式会社ルーヴィス)

運営体制構築:治田友香(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)

ホームページ制作:森川正信(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)

ロゴ制作:辻浩史(株式会社セルディビジョン)

コーヒープロデュース:刈込隆二(オトノマ株式会社)

運営:櫻井怜歩(リストプロパティーズ株式会社)

 

対談進行:北原まどか(特定非営利活動法人森ノオト)

執筆:牧志保(特定非営利活動法人森ノオト)

スチール撮影:堀篭宏幸(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)

動画撮影:竹内竜太(サンキャク株式会社)

 

>>対談1はこちらから<<

>>対談2はこちらから<<

 

Gでどういう人のコミュニティをつくっていくのか?

治田友香(関内イノベーションイニシアティブ株式会社):

私たちが運営しているmass×mass 関内フューチャーセンター(通称マスマス)は地域とつながるシェアオフィスという名の下、地域のまちづくりに関心のある人に入居してもらいたいと考えています。それにより、単なる利用者と運営者というものにとどまらない関係性を利用者との間に築けていると感じています。

私は、そのような枠組み、入居希望者への審査のあり方など、今後Gを運営していく上で参考になると思われることをGのプロジェクトメンバーに話してきました。

 

櫻井怜歩(リストプロパティーズ株式会社):

これまで私たちリストグループは、入居者とコミュニケーションをとりながら場を運営していくというスタイルをとったことがありません。そのため、マスマスさんの具体的な事例や業務の話を聞けたことは大変勉強になりました。

 

森川正信(関内イノベーションイニシアティブ株式会社):

私は、Gのホームページを作成する過程で、Gの運営者であるリストグループのみなさんと色々な話をしました。どんな人にGを利用してもらいたいか、利用者にどういう付加価値を提供していきたいかをヒアリングしていきました。その中で、Gを利用する人の暮らしやビジネス、人生をアップデートしていける場にしたい!と、「〇〇をアップデートする」というキーワードを打ち立てていきました。

相澤毅(株式会社plan-A):

私自身これまで様々な人や企業と仕事をする機会が多くありましたが、このGプロジェクトを通して、さらに新たな分野での関係性や拡張性が広がり、今に至るまでに自分自身がアップデートされたと感じています。

マスマスは起業する人を応援するということを、はっきりと打ち出していますが、Gはあえてそういう色を持たないだろうと思っています。多種多様な人やものを受け入れる場を想定していて、色に例えると、レインボーではなく黒です。そしてInnovation Hubという名前を出すことで、サロンのような使われ方を考えています。人と人との関係性、空間の居心地の良さを大切に、利用者がふらっと来やすい状況をいかにつくるかを大切にしています。

 

関内の未来像とGの役割は?

 

西田司(株式会社オンデザインパートナーズ):

働き方改革などと言われる中で、働く価値がどう変わっていくのか? 私は、働いていて楽しいという人が増え、働くことと生活することがフラットになっていくのではないかと考えています。色々な生き方や働き方を受け入れ、それぞれの生き方と働き方を同居させる、GがそのHubになれたらいいと考えています。関内エリアは古い建物が多く、スマートオフィスと言われるようなバシッと決められた空間は望めませんが、建て付けが悪いとか、気密性が低い等、古いが故に持つゆるさがいい意味で作用して、多種多様なものを取り込んでいけるのではないかと期待しています。

最近、どんな仕事をしたいというような考えはなく、それより誰とやるか、どこでやるかが、仕事をする上でのモチベーションにつながっています。何をやるかに価値を置くと、仕事を継続するのが辛くなってくるのではないかと思っています。このメンバーでやってみよう、この場所だからやろうという感覚であれば、人や場所といった変化していく不確定要素により、仕事に飽きることがないと思っています。

原﨑寛明(Hi architecture):

私は関内出身で、横浜第一有楽ビルは、昔からよく知っています。独立したときから、関内のまちと関わる仕事をしたいと考えていました。今回これからの関内を担う場をつくる仕事に関われたことは、私自身にとって価値のある経験となりました。

このまちは、みんな自由に好き勝手にやっています。そこに魅力を感じて、Gでは自分も好きにやってみようと思えたり、Gを通して関内のまちの面白さに気づいたり、そんなきっかけがどんどん生まれていけばいいと思っています。Gプロジェクトは、関内にとっても、自分にとってもマイルストーンになったと感じています。

福井信行(株式会社ルーヴィス):

私は毎日、遊びながら仕事をしているという感じで働いています。1日15時間くらい働いているような気もするし、1日15時間遊んでいるような気もする。スマートフォンのおかげで、いつでもメールは気になるし、仕事とプライベートを切り分けること自体が難しくなっています。ニュートラルに遊びながら、仕事をする時には集中して仕事をし、そして遊ぶ、というようなスタイルが私には合っています。

関内は、飲みに行きたくなれば飲み屋がある、仕事もできる。ビジネスとプライベートの領域の曖昧さでは、ちょうどいいバランスのまちだと思います。遊んでいるのか、仕事をしているのか分からないという様な人が集まるまちになれば、昼でも夜でもまちに人は増え、面白くなると思っています。それが期待しているところでもあります。

刈込隆二(オトノマ株式会社):

私は12年前に独立して以来、働いているという感覚はなくなっています。会社に勤めていた時はオンとオフが明確でしたが、いまは24時間常にオンで、その中でオフを積み上げているという感じです。私のような感覚で仕事をする人には、Gはとても刺激的な場所になると思っています。

私の仕事場と住まいはGのすぐ近くです。会社勤めを辞めて最初の3年間は、毎日写真をとってインスタグラムにあげるということをやっていました。フォロワーは10万人になり、そのうちの4割は海外に住む人でした。普遍的なものや、人の情感に訴える何かは、仕事をする場所に関係ないと思っていて、私はこれまで地域に根ざして何かをやるという感覚は持っていませんでした。しかしこのプロジェクトを通じて、関内だからこそできることもあると感じるようになりました。私自身それを見つけられたらといいなと思っています。

 

辻浩史(株式会社セルディビジョン):

私は都内に住んでいて、これまで関内についてあまりよく知りませんでした。このプロジェクトの最初の段階で関内をまわるツアーに参加し、多くの会社や店をめぐって、好きなように働いている人や、一つの型にはまらない店や人が多い、そんな関内の魅力を知りました。

私は、これまで仕事しているのか、遊んでいるのか分からないという感じで生きてきました。時代的にもオンとオフの境目が曖昧になっている中、自分にとって、それは当たり前のことでした。

働くことへのハードルが下がり、楽しく働き、食べて、寝るという生き方にフィットする形が、ここGから生まれたら面白いと思っています。そしてGがベンチマークとなり、このような場が様々な場所でできていけばいいと思っています。

治田:

私は1994年から2年間、東京から関内にある会社に通っていました。その頃の伊勢佐木長者町は元気で活気にあふれ、華やかで、いいまちだなと感じていました。その後いくたびかの異動を経て、9年前に関内に戻ってきた時、このまちの風景はすっかり変わっていました。だからこそ関内で仕掛けられることがあるのではないかと思い、マスマスを立ち上げました。

マスマスに入居している人たちは、自分の軸をしっかり持ち、自己の価値判断で動いています。台風がきたら、オフィスには誰もこない。これまで企業で働いていた私にとっては衝撃的で、自分とは違う生き方をしてきた人たちなのだなと感じていました。みな自由に働いているように見えるけれど、自由の中にも秩序がある。そして、人間力がないと仕事がないのでやめていく人もいます。そんな起業家たちの様々な面を見てきて、インフラを提供する側としては色々な役割を果たしていかなければならないと感じています。

産業を生み出し、地域経済をまわす。横浜の価値の再発信、福祉とイノベーション等、私たちにしかできないことを行い、他の地域にも影響を与えていきたいと考えています。自分たちだけではできないことも、手を結べる人と一緒にやることで可能になることも多いと思います。マスマスだけでなく、色々な拠点がまちに存在することが、関内の価値につながっていくのではないでしょうか。

 

森川:

私は横浜出身で、2009年に東京から横浜に戻り、個人事業主としてデザインの仕事を始めました。東京で働いていた頃は、関内は映画や野球を見に行く場所だと考えていましたが、いざ自分で仕事を始めようとした時、「関内なら自由に好きにやっていける」と関内に魅力を感じました。それが私の横浜ビジネスのスタートです。

このエリアは横浜市が掲げる創造都市の流れでアートの色が強かったのが、2011年にマスマスができて、社会起業家、ソーシャルビジネスという要素がインストールされました。これからGができることで、そこにビジネスという側面が加わり、横浜、関内から海外にまでどんどん発信していけるコミュニティが生まれたらいいなと思っています。横浜は皆が知っているまちで、横浜で働いていると言うと、いいねと言われます。「横浜っておもしろいよね」そう言われるようになったら最高ですね。

米国・オレゴン州のポートランドは、市民参加のまちづくりで世界的に有名なまちですが、そこでは「First Thursday」といって、毎月第一木曜日に、ギャラリーやホテルなど様々な場所が開放され、まちを自由に回遊できるイベントがあります。関内でも年に一度「関内外OPEN!」がありますが、もっとそれが日常的になったらいいなと思っています。

櫻井:

私は1994年生まれで中高生の時には既にスマートフォンがあり、SkypeやLINEで簡単に海外の人ともコミュニケーションをとれる時代に育ちました。学生時代を海外で過ごし、自分は何者かを問われる中、そこでは国籍は重要ではない、国籍など様々な境界がフラットになってきているという印象を受けました。

横浜は開港都市として、世界中の人を受け入れてきましたが、そんな横浜、関内に、これからも多様な人種や年齢を受容できるまちであることを期待しています。

本日の対談では、コミュニティというキーワードが多く出てきましたが、Gでは安心できるコミュニティをつくっていきたいと考えています。会社や組織などの枠にとらわれない、コーヒーが好き、クラフトビールが好きというようなことでコミュニティが形成され、そんなゆるいコミュニティの中から楽しいものが生まれていく、そんな場をつくっていきたいと思っています。

 

相澤:

私自身の働き方というのが、遊んでいるのか働いているのかよくわからない状態です。「働く」を一言で表現することはできません。オンとオフの境目はないし、打ち合わせに子どもを連れて行くこともあり、仕事と育児の境目もない。このような曖昧な生き方、働き方をしていても、大手企業と一緒に仕事をすることもあります。企業や行政は、一つの業界にとどまらず、様々な業態を探索している人が持つ種のようなものを求めていて、私のような働き方は今の時代を象徴しているのではないかと、自分自身が感じています。そういう動きをする人は圧倒的マジョリティにはならないけれど、今後増えていくと感じていますのではないでしょうか。様々な場を行ったり来たりする人にとって、Gはサロン的役割を果たすと考えています。今は働き方や生き方の曖昧さや多様性が、すごい勢いで撹拌されていて、楽になっていく過程の中にあると感じています。その中でGは一つのモデルになれればいいと思っています。

関内にある様々な企業や施設がそれぞれの役割を持って機能して、最終的に結束する。そうなるとエリアとしての価値は高まっていくはずです。Gを通して、そんな動きを打ち出していきたいと考えています。

 

【プロジェクトメンバー】

㈱plan-A(プロデューサー)

株式会社オンデザインパートナーズ + Hi architecture(設計建築)

株式会社ルーヴィス(施工)

関内イノベーションイニシアティブ株式会社(運営体制構築)

株式会社セルディビジョン(ロゴ制作)

オトノマ株式会社(コーヒープロデュース)

リストプロパティーズ株式会社(運営)

 

Edited by 北原まどかさん 森ノオト 理事長/編集長/ライター

ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。生活者とエコ、エネルギーを近づけ、楽しむ啓発活動と、メディアを介したまちづくりに力を注ぐ。これまでの10年間で90名以上の市民ライターを育成、本記事は森ノオトライターで建築士の牧志保さんが手がけている。