G Project
COVID-19による働き方のパラダイムシフト
COVID-19の感染拡大による緊急事態宣言は、在宅勤務やオンライン会議の導入など、これまでの働き方を大きく変えることを余儀なくされている状況にある。
これまでも労働時間の見直しや雇用の格差など、働き方改革が叫ばれてきたものの、その前提が、勤務時間中はオフィスにいる必要があり、働く場と生活の場がはっきり分かれていること、毎日8時間働き生活の時間とはしっかり区切られていることなど、会社が働き方を拘束していた部分がある。
全就業者数の89.3%がサラリーマンと言われている(2020年1月発表総務省統計局のデータによる)日本においては、こうならざるを得なかったのかもしれない。
しかし、終身雇用の崩壊、副業の解禁、さらには緊急事態宣言における国や自治体の在宅勤務推進などにより、これまでとは違う働き方が一般化されるようになると、組織に属しオフィスで仕事をする概念は徐々に崩れつつあるといえる。
毎日会社へ出勤する必要はなくなり、合間に家事をしながら仕事を進める。家にいる時間が増え、子育てが主体的となる。仕事に集中したい日は、近所のコワーキングスペースを使う。オンラインで社外の人と簡単につながるようになり、会社に属している方が仕事の幅が狭まると感じる。
こんな時代がすぐそばまで来ているのかもしれない。
時代の大きな転換点には、自然災害などが密接に絡んできたことは歴史が証明しているが、今回のCOVID-19もその大きな転換点といえる。
つまり時代は、働き方改革を超えた先の「働き方のパラダイムシフト」にさしかかっている。
住むと働くの新たな関係
G Innovation Hub Yokohama(以下Gという)では、プロジェクト発足当時から、「働くと住むの関係性」や、「その人らしい生き方」に重きを置き議論してきた。
オープンから1年を迎えようとしている今、入居者は80人近くとなり、全体の約7割の居室が利用されている。業種は士業、プログラマー、デザイナー、アプリ開発、官民合同のベンチャー、設計士、不動産業と多種多様で、年齢も20代から60代と、若手、子育て世代、定年を前に第二の人生を歩みだした人と幅広い。
これまで周知はホームページのみと、敢えてターゲットの絞り込みやマーケティングを行ってこなかったわけだが、それゆえGの入居動機も職業もさまざまとなった。
自然発生した空気の混ざり具合が、いつでも新たな個性を見事に受け入れる“包容力”を有していると、言えるのではないだろうか。
Gに足を踏み入れるとわかるのだが、雰囲気が街にいる感覚に近い。
壁がないセミオープンブースは、置いてある本や仕事道具、趣味の品や飾られたポスターまで、入居者の仕事や人柄が垣間見える。
それぞれの居室近くでご近所同士会話をしている様子は、日常の景色。だからこそ、見学者はお客様という感じがなく、自分がそこにいても違和感がない。
また、コーヒー機器が揃うキッチンには、挽きたての豊かな香りとともに、入居者の会話が常にある。居室にいるときより、話しかけやすいから、コーヒーを淹れながら自然とブレイクタイムが始まる。
「こんな仕事のオーダーがきた。どのように受けたらいいか?」というビジネスの相談から、「仕事仲間の家族の誕生日には日中でも電話しない。家族との時間を大切にしてほしいから」といった生き方の哲学、はたまた「今日は5時になったらハッピーアワーを狙って近くに飲みに行って、7時からまたGで仕事」という関内らしい飲み屋の話から、「最近保育園の呼び出しが妻ではなく、自分の電話にかかるようになってきた」というプライベートな部分まで、仕事とプライベートに境界線なく、豊かなコミュニケーションが生まれている。
これまでの、“生活するために働く”という考えは、働くことと、生活することは別物にされてきた。
しかし、これからの時代、否応なしに暮らす場に仕事が入れば、働き方はそれぞれの暮らし方に近くなる。まさに多種多様になり、より自分らしさが求められ、その部分が仕事でのアドバンテージになってくるのではないだろうか。
そこが、オンライン時代での、リアルな場の重要性につながっている気がする。
オンライン上では、自分と似たような価値観、立場の人と同じ場所になりがちだが、そこに居続け成長できるだろうか?通勤にかける時間を趣味や家族のために時間につかえないだろうか?
オープンからもうすぐ1年が経つが、入居者と交流するなかでGが大切にしてきたことがある。
具体的には、5つの要素である。
- ・趣味=仕事、でもワーカホリックではない仕事観
- ・多世代だから生み出されるインタージェネレーション
- ・コミュニケーションから生まれる空気感と温度感
- ・頑張りすぎないから生まれる自主性と想像力
- ・オフィスだけどオフィスじゃないGのコミュニティ
オンラインでの働き方が加速している今、自分の働き方を大きく見直す局面で、このポイント5つは、とても意味があるのではないかと感じるようになった。
これからのデジタルとリアルが融合した働き方を考えるにあたり、Gのようなリアルな場が重要なのではないだろうか?
Edited by G Innovation Hub Yokohamaスタッフ 小室真知子
神奈川県出身、神奈川県育ち。強い地域愛がある中で、神奈川県内のローカルメディア記者を20年務め活躍。2019年8月よりGの運営に参画。子育てをする2児の母でありながら、時代の変化と共に自らの働き方も変革し、神奈川・横浜での地域を盛り上げている。